佐藤 風汰
株式会社エービーシー建材研究所 
湿式材料研究室 湿式第二グループ
2015年入社 理工学部 
物質応用化学科卒

大学では、医療に関わる化学薬品の実験に没頭。その経験から、就職活動では研究職を志望した。そして、大学で行われた説明会でエービーシー商会と出会い、医療関係の原料も扱うと聞き興味を持つ。選考中に社員の話を聞き、年齢の壁を越えた風土に魅力を感じて入社を決めた。現在は、商品の課題解決に向け、様々な薬品を使った実験にひたむきに取り組んでいる。

研究所の仕事について

実験漬けの日々が心地いい

湿式材料研究室では、すでに販売されている塗り床材の改善・改良を行っており、その中でも私は、樹脂系塗り床材の「ウレタン」という分野の塗り床材を担当しています。塗り床材のさらなる品質向上と安定化を目的として、研究を行う毎日です。学生時代から実験が好きだった私にとっては、これ以上ない環境だと思っています。
ひとつの商品は数十種類の原料から成り立っており、さらにそれぞれの原料の特性を補うための薬品も入れています。原料を別のものに代替したり、それら薬品の分量を少しずつ変えたりしながら、商品が持つ課題を解決できる配合を確立させることが私の仕事です。例えば、強度を向上したければAという薬品を多く入れるのですが、それだとウレタンの特徴である伸びが低下してしまうということがあり、最適なバランスを見つけるために、何度も実験を繰り返していきます。また、最適なバランスが見つかったとしても、塗りやすくなければ意味がありません。課題を解決しつつ、現場でも塗りやすい配合を見つけ出す。根気のいる作業ではありますが、それが楽しくてしかたないですね。

JOBS

印象に残るエピソード

STORY 01

長年の業界課題に
終止符を打つために

今まさに改良に取り組んでいる樹脂系塗り床材があるのですが、この課題解決は私が携わってきた中で最も大きなものになりそうです。
日本には四季があり、冬と夏では気温の差が大きくなります。特に冬場に施工を行う際は気温によって材料が固くなってしまうため、作業性をよくするために特別な薬品を入れるのですが、その影響で塗り床材の強度が少しだけ下がってしまうのです。そして、夏に入ると下地の水分がどんどん上がり、強度が下がった塗膜が水分の押し上げに負けて、ぷくっと膨れてしまうことがあります。この事象は、塗り床材に入っている原料を変えていけば改善される可能性があり、その最適解を導き出すために検証を重ねています。しかし、その原料を変えることで起きるデメリットもあります。バランスを見ながら、少しずつ薬品の量を変え、実験と評価を繰り返していますが、この事象は業界でも長年の課題となっているもので、やはり一筋縄ではいきません。

STORY 02

原因を想像する力が、
解決への近道に

また、原因がこれだけではない可能性も大いにあるため、別の方向性も2パターンほど同時に試しています。合計で3パターンのアプローチとなりますが、それぞれで薬品を増やす・減らすという観点がありますし、その増やし方や減らし方も段階を追って試していかなければなりません。実験や評価も毎回同じ条件であることが必須ですし、最終的な判断は実際に塗ってみないと分かりません。塗る作業も自分で行うのですが、その技術力と集中力も必要です。
そうした仕事を数年経験して感じるのは「想像する力」が研究職にとっては大切になるということです。今回のように「水で膨れている」のであれば、強度を向上すれば膨れないという理論はもちろん当てはまりますし、膨れない材料を使うという方法も正しそうです。あるいは「水を来させないようにする」という方法が正しいかもしれません。視点を変えて想像力を働かせることで、答えに近づくことは多々あります。

STORY 03

研究職ほど、経験がものをいう

この「想像力」とは経験を積むことによって磨かれていくものだと考えています。本で得られる知識だけでは想像力を磨くことはできません。研究の現場でしか分からないことの方が多いのです。実際、上司や先輩方は「勘」がいいんですよね。そういった意味でも、これからも積極的に経験を積んでいきたいと思います。今のプロジェクトの進み具合は概ね50%ほどですが、手強い分、よい経験をさせてくれそうだなと期待しています。自分の研究の成果が、そのままエービーシー商会の商品の品質になりますし、それをお客さま先で使っていただけるのは本当に嬉しいですよ。
数年前に、ある大手自動車メーカーの塗り床材を担当し、強度と特殊なデザイン性を兼ね備えたものという、それまでエービーシー商会では対応してこなかった商品を開発した経験があります。試行錯誤を経て、施工が完了して現場を見に行った時は、「これを自分がつくったんだ」と誇らしい気持ちになりました。院卒だけではなく、学部卒でも若手のうちからそうしたことに携われるのは、当社の特長だと思います。